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開発事業に生物が介在すると,従来の概念や手法では対応しにくい問題が生じていることなどは,その典型的な事例であろう。
ここでは,開発型の手法や技術を,保全型の手法や技術に転換していくことが要請されている。 問題の広がりと深化の程度によっては,計画や事業内容の骨格を再検討することが求められよう。

環境政策が,環境資源の価値を高めるという課題に取り組もうとすると,これまで見えなかったものを見えるようにすることが必要となる。 つまり,市場の評価を介さない,生産的でないとみられる自然の評価に,新しい視点から光をあてるといった事項である。
自然の作用は,まだ未解明の部分が少なくない。 表面的には微妙な違いであっても,一定の空間における連関作用としては大きい相違となるかもしれない。
このため,試行錯誤のくり返しによって,自然を適切に位置づけていくことが重要となる。 この場合,試行錯誤を支える共通の了解事項が,社会的に意味のある生活空間を編成するという課題であろう。
こうした試行錯誤と既往の環境観の変化が相互に作用しあって,場の評価に関する価値意識がしだいに共有されていくと,環境資源の価値を向上させる基盤はより強化されていくものと思われる。 R・K( K 大学農学部)ここでは,農業と環境の関係を論じた上で,環境経済学の考え方と理論を用いて農業環境政策(環境保全と調和する農業のあり方に関する政策)の研究課題について検討する。
まず第2節では,農業と環境との関連性について論点の整理を行い,第3節では,農業・農村の果たす多面的な機能(公益的機能)とそれを射程にいれた農業政策の重要性を指摘する。 そして第4節では,農業・農村の公益的機能の評価に関する新たな分析手法を比較検討することによって今後の研究課題を明らかにしたい。
農業はおそらく,近年の高度な近代化以前の段階までは,いわば環境とともに共生するという形で営まれてきた。 したがって,環境と農業のかかわりを問いかける必要はあまりなかったといえる。
ところが,1970年代の後半を一つの境として先進国を中心に農業のあり方が過度に集約的,化学資材依存的となり,農業が環境に対して加害者となるマイナスの部分がより顕在化してくるようになった。 そこで登場したのが「環境保全型農業」(英訳はsustainableagricultUre)であるが,時代のキーワードとして徐々に定着しつつある。
端的にいえば,環境保全型農業とは「人と自然に対してやさしい農業」と表現できる。 人とは,生産者,地域の生活者,消費者,あるいは社会全般を指す。
つまり人間にとって安全であり,より危険が少ないという意味で「人にやさしい」ということである。 「自然にやさしい」というのは,農業の持続可能な生産力が保持できること,あるいは動植物の生態系を考慮してそれに対して環境負荷のより小さな農業を意味している。
つまり,化学投入資材に過度に依存した農業から,それ以外の要素,例えば生物的な対応や工学的な対応によって環境負荷をより小さくするという方向であり,リサイクル可能な農法への転換が求められている。 ただし,システムを転換する場合に,単に化学物質の使用をやめてしまうとか,半分に減らすという単純なものではない。
何かを減らす代わりに他のもので補うことによって,長期的に持続可能な生産力が維持されるべきであるという前提が込められている。 では,なぜ,環境保全型農業が国際的に問われてきたのか.政策的には80年代中頃が一つの転機となったが,その背景を次の四つの項目に整理しておこう。

かつての楽観論から食料・人口の見通しに関する方向転換が求められつつある。 人口・食料・農業生産のバランス,とくに人口増加にみあう食糧増産の可能性について,かつてほど楽観的ではいられないという見通しが強まりつつある。
農地と水資源の制約が強まる中で,21世紀初頭の食料供給は果たして大丈夫なのか,そこでは農業と環境のかかわりに着目せざるを得ない背景がある。 先進国,途上国を問わず,農業そのものがますます持続可能ではなくなりつつある。
農業の近代化の中で化学物質多投型,過度なエネルギー投入型の農業によって,地力の低下,砂漠化,地下水の枯渇など,環境の劣化が農業生産そのものも不可能にしてしまうというさまざまな問題が顕在化してきた。 農業のあり方が変わることによって環境負荷そのものが増大してきた。
例えば残留農薬の問題,農業に由来する地下水汚染などによって,自然生態系に対して,あるいは人の健康にとってさまざまな障害が生じてきた。 そして,農業のあり方を変えなければこの問題も解決できないことも明らかである。
農産物・食料の安全性への強まる懸念食料に対する先進国におけるニーズが量から質へと変わりつつあり,その質的な満足の中には食品の安全性が最優先の課題として認識されるようになってきたことも重要な要因の一つである。 1992年3月,パリで行われたOECDの第11回農業大臣会合で農業と環境の問題がかつてない重要課題として,正面きって取り上げられ,次の4点が合意された。

つまり,農業が環境に及ぼす影響には正と負の両面が存在すること,農業は,環境の持続性や農村地域資源の保全に一層貢献しうること,農業政策の改革は有益であり得ること,OECDは,農業と環境の関係およびその政策的含意についてさらに研究を深める必要があること,の4点である。 このように,一方では農業のもつ外部不経済(環境汚染など)をいかに軽減させるか,他方では,農業・農村が果たしている多面的機能,とくに環境保全やアメニテイー面での機能をいかに発揮させるかという二つの方向が国際的な潮流として浮かびあがってきている。
そして,これらの外部効果を踏まえた農業政策の新しい枠組みをいかに用意するかが今後の大きな政策課題と言えそうである。 日本においても,90年代に入ると農政改革の重要な一つの柱として環境保全型農業が取り上げられ,92年(平成4)度からは具体的に予算化され,政策的に推進されることになった。
しかし,欧米との対比で言えば,基本的なスタンスにおいて今なお大きな課題を残しており,その具体化に向けた対応がようやく開始されたばかりである。 だが,現場では,具体的にどうすればいいのかがよくわからない,という声が多く聞かれる。
また専門家や農業関係のリーダー層の人たちほど,効率性追求一辺倒のままであり,環境保全型農業に対するアレルギーも強く残っている。 環境保全型農業では生産性を確保できないのではないか,しかも,一般の農家はそんなことでは納得しないだろうという思い込みも強い。
したがって,環境保全型農業の必要性についての共通認識を農業関係者がどれだけ理解するかが,この問題解決への大きなカギを握っていると考えられる。 工業とは異なり,農業・農村は本来,人間や自然に望ましい環境を提供したり保全したりするという重要な機能がある。
さらに,農業・農村が潜在的にもつ多面的な機能は,このような国土・環境保全機能にとどまらず,いきいきとした自然環境や美しい景観によって,憩いやレクリエーションの場をも提供している。

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